水中施工法概要
溶接や切断はもとより,コンクリートの打設や防食工事,研磨,撮影など,従来はドライ工法でしかできないと考えられていた様々な工事も,水中技術により,安全に短期間で施工することが可能となっています.
ここでは45年にわたって蓄積された水中技術のうち,特に施工法について紹介しています.
目的や環境,条件にあわせて手法が変わる水中施工技術は,お客様との緊密な打合せを基にその実力を発揮します.
水中切断・溶接
破損プロペラや鋼矢板の切断,鋼構造物の溶接なども水中で行うことが可能です.
木材はもとより,鋼材などの金属類(鋳物も可)の他,橋脚などのRC構造物も切断することが可能です.
(アーク切断)
アーク切断は各種鋼材(ステンレス・真鍮・鋳物類など)を切断対象とする切断方法です.
主に船舶や鋼構造物の補修等で実施しますが,その他特殊な現場としては,ビル基礎杭のケーシング切断や,シールド工法における出口での鏡切切断等も行っています.また,沈船引き上げにおいて,船体及びプロペラシャフト等の厚みのある材料についても切断することが可能です.
なお,劣悪な作業条件下,例えば切断対象物の裏側にコンクリートや土砂がある場合や,視程0mの状況(無視界潜水)での切断も可能です.
溶接については,アーク式溶接を多用します.専用の溶接棒を用いて船舶外板の補修や,部材の取付などを行います.
主な切断方法と対象物
切断方法 |
対象材料 |
主な施工例 |
アーク切断 |
金属(鉄・真鍮・ステン等) |
船体解体,鋼構造物補修 |
ガス切断 |
金属(鉄・真鍮・ステン等) |
船舶補修,矢板切断 |
ダイヤモンド
ワイヤーソー |
RC,岩,鉄,PC杭等 |
構造物撤去 |
油圧カッター |
RC,岩,鉄,PC杭等 |
比較的肉厚の薄いもの |
水中型枠工事・コンクリート工事
水中コンクリートの打設時に用いる水中型枠工事の他,打設工事自体も行っています.主に護岸のRC構造物や矢板護岸の補強,補修,改良などで需要が高く,海岸工事だけでなく,ダムや河川などでも実施しています.
陸上で行われているコンクリート工事と同様の施工が水中でも可能です.ただし,使用する材料は,水中打設用に配合されたセメントを用います.水中施工用のセメントは,比較的スランプ値が大きく,流動性が高いですが,同時に水に対する不分離性も高いという特性を持っています.
なお,施工目的に応じて適切な施工方法を選択する必要があります.
(スタッドジベル型枠工事)
既存構造物にスタッドボルトを取り付けて配筋する補修・補強工法です.配筋の後,型枠を設置してコンクリートを注入します.
鋼矢板岸壁の補修,その他鋼管杭の補強補修に有効です.
(プレキャスト工法)
陸上のプレキャスト工法と同様に,大型の鋼製型枠を製作し,打設予定箇所に設置する方法です.製作した型枠は,打設予定位置に予め施工しておいた定着アンカーに連結させ,固定します.
(布製型枠工法)
型枠材料にナイロン製の特殊シートを用いる工法です.型枠の設置が人力で可能であるという利点の他,固定用のアンカーを任意に配置することで,多種多様な形状を創出することが可能です.
重機の使用できない狭い場所や,暗渠などでの使用に有効です.
(根固め型枠工事,ファブリフォーム)
袋状の型枠を用いる工法です.主に根固めで用いています.袋型枠の注入口から直接モルタルを注入します.河床の床止めなどにも有効です.
防蝕工事(防食工事)
電位測定,孔蝕腐食調査,肉厚測定,塗膜(塗装膜)厚測定等を行い,防蝕工事の基礎資料を作成します.また,防蝕工事の施工も実施しています.
【コンクリート防蝕工事】
・エポキシ樹脂塗装及び腹付けコンクリートの防蝕工事
【鋼構造物防蝕工事】
・電気防蝕 : 陽極取付工事
・被覆防蝕 : カバー防蝕,塗装(エポキシパテ施工)防蝕
水質汚濁防止工法
水中施工の際の最も大きな問題点のひとつは,水質汚染・汚濁です.
水中の濁りが始まると,潜水士の視界は失われ,無視界で作業を実施しなければなりません.また,底質によっては,浚渫などの施工途中に人為的に海水汚濁を引き起こすこともあります.
以下に示す例は,こうした水質汚濁や無視界状況を改善させるための一手段です.
◆施工例:有機性沈降剤を用いた有視界環境形成工法
本工法は,下図における施工範囲を不透水性シートで隔離し,有機性沈降剤を用いて濁水を一部清水化(手元が見える程度)し,潜水士の視界・視程と確保する工法です.
アンカー施工
水中における配管や,機械・支柱・構造物の固定などに用いられる工法です.
施工に用いるアンカーは,ケミカルアンカー,樹脂アンカー,打込式アンカー,樹脂注入式アンカーなどがあります.
基礎や架台類の設置用アンカーは,型枠を組み,コアドリル削孔を実施して施工します.
差筋や,アンカー施工箇所にグラウトを注入することで,RC構造物の補強や強度の維持にも有効です.
調査・探査工事
水中カメラや水中ビデオを用いて,調査を行います.撮影した画像や映像と潜水士の目視に基づく調査結果を報告書にまとめて納品します.
リアルタイムで調査状況を確認する場合は,有線式水中ビデオと水中通話装置を用い,モニター画面を直接見ながら陸上から指示を出スことが可能です.
海底遺跡の発掘調査から,漁礁調査や爆発物探査まで幅広い調査が可能です.
特に海底遺跡発掘調査は,長崎県鷹島町の海底において,元寇の乱の際の元軍船の発見・発掘に従事し,平成14年には「てつはう」の発見実績を有しています.
また,海底爆発物探査は,磁気探査機を用いて広範囲の探査を行い,これまでも各港湾における探査工事実績を有しています.
なお,大水深(60〜150m)の水底を調査する時は,ROV(自走式水中TVカメラ)を使います.
調査工事の主な例は,以下のとおりです.
調査種類 |
内訳 |
鋼構造物調査 |
鋼板の肉厚測定,劣化調査(減肉調査) |
RC構造物調査 |
コアサンプル採取,クラック状況調査 |
水産生物調査 |
漁礁や干潟の動物生息調査,低泥採取,水質調査用サンプル採取 |
水中遺跡調査 |
水底・海底の遺跡調査,発掘,遺跡出土品回収 |
沈没船等調査 |
沈没船の状況確認作業 |
海底探査 |
爆発物等の有無を磁気探査等により捜索 |
汚染水域における潜水作業
人体に悪影響を及ぼす汚染水中での作業には、漏水の無い防護潜水服を使用します.
防護服は自社開発のドライスーツを応用して改良したもので、頭部は欧州で高い評価を受けているハードハットを使用しています.
作業可能な汚染環境については、お問合せください.
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