近年,特にレジャーダイビングの世界ではJバルブを見ることがほとんどなくなりました. Jバルブ,つまり,リザーブバルブは,空気ボンベのバルブの一つで,バルブ本体に安全装置を取り付けたものです.スクーバダイビングが日本で広まり始めた1960年代後半,空気ボンベのバルブは須らくJバルブでした.しかし,ここ最近では,作業ダイバーまでもがリザーブバルブの無いK2バルブを使用しているようです. NDAは,安全を第一に考える立場から,レジャーダイビングの指導講習においても,可能な限りリザーブバルブの使用を訴えてきていますが,残念ながら100%の需要者に受け入れて頂くまでには至っていません. しかし,それでもリザーブバルブの使用を推奨し続けるのは,リザーブバルブが私たちの命を守ってくれると信じているからです. 潜水事故の原因の一つに,残圧切れ,つまりボンベの空気がなくなることによる事故があります.海の中にいるのですから,空気がなくなることは直接生命の危機を意味します.NDAは,この問題を直接的にかつ高い信頼性を持って解決してくれるのがリザーブバルブであると考えています. リザーブバルブを正しく使用していれば,残圧が少なくなったことが,呼吸をすることで簡単に理解できます.呼吸が次第に苦しくなりはじめるので,「残圧が少ないな」と実感することができるのです. この時にリザーブバルブを作動させると,リザーブバルブで抑制させていた残りの空気を通常通りに使用できるので,作動直後に浮上すれば余裕をもって無事に浮上することが可能です. ゲージやダイブコンピュータ,警報装置など様々な安全対策もありますが,何よりも基本的な物理的安全機構であるリザーブバルブこそ,最も重要な安全対策であると言えます. 確かに,リザーブバルブも取扱を間違えれば重大な危険を招きますが,操作は至って簡単で,呼吸が苦しくなったらプルロッドを引くだけです.しかも,吸気に直接影響が出ますので,見逃しのミスなどはあり得ません.もちろん,リザーブを下げたまま潜水していたら大変なことになりますが... 私たちは,ダイビングにおいては複数の安全装置を採用するよう指導しています.つまり,二重以上の安全機構を装備することを指導しています.一つはリザーブバルブ,その他に,残圧計,警報装置を最低限の安全装置と考え,余裕があればダイビングコンピュータの使用を薦めています. また,バディー潜水も義務付けていますので,どちらかの残圧が少なくなった時点(リザーブを下げた時点)で両者とも浮上するよう指導しています. 皆さんもリザーブバルブを使用して頂き,せめて残圧切れでの事故がこの世界から一掃されることを願わずにはいられません.
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